136166“生殖存在である「女の不安」が私有意識をもたらした”(大木氏)を読むと、母系集団から父系集団に変わったことよる「女の不安の上昇」というものが、必然でありいかに重要な意味を持っていたかが分かる。
ちょっと気になるのが、「女の不安」は私有意識の発生の前提には確実にあっただろうが、直接は繋がらないような気がする点。
つまり、不安はあるけれども集団が共有する強い外圧が前提に存在するため、遊牧集団でも自我は一定封鎖されていたはず。まだまだ集団意識は強く、「自分の娘」とか「自分だけ扱いが悪い」などの強い“自分意識”はまだこの段階では生起していないと考えられる。
というわけで、一旦「個人の私有・蓄財意識」と「集団の私益収束」とを分けて考えてみる必要があるのではないだろうか。
長老(ボス:統合者)の意識に同化してみると考えやすい。
女の不安の上昇は、共認を命綱にして生きている人類集団にとって重大な影響を与える。成員の表情や言動から、「女の不安の高まり」は当然全員の意識するところとなる。
不安が高まった成員をそのまま放置すると、成員は自我に収束し、他者否定→集団否定→集団規範無視(不倫・駆け落ち・集団の成員同士のいざこざ・サボタージュなど)にまで発展する危険性がある。こうなると、集団を統合していく上で実に厄介なことになる。
長老(ボス:統合者)は、不安を抱えた女を含めた集団を統合するために、規範を厳格にする(規範破りへの制裁を厳しくする)一方で、それだけでは統合しきれないので、成員の意向を汲み上げて何らかの「集団課題」をつくる必要があっただろう(そうすることによって、不安→自我を止揚した)。
その一手が、まずは勇士資格を厳格にすることだったと考えられる。
具体的には、勇士資格を持たない者が嫁をとることができないのは当然として、不安→依存収束を強めた女と勝手に関係を持つなどは言語道断とするなど、婚姻規範を厳格化したのではないか。
他方では、安心(共認充足)の代償物である家畜や財(岩井氏136597参照)の獲得への女たちの期待(要求)を汲み取り、それらの獲得を集団課題とすることであったと考えられる。ゆえに、家畜や財を確保する能力や実績のある男が勇士として高い評価を得るようになる。このように形成された評価共認をベースに、長老(ボス)は氏族集団を統合するために、「勇士資格」を厳格化したのだろう。
これによって、男達の「評価獲得競争」は「財・家畜の獲得競争」に収束し、「氏族集団の縄張り拡大課題」に収束する(自集団の縄張り第一主義の萌芽)。このことは氏族集団の自立性をますます高め、部族集団の分散力が強くなるので、部族長は「部族としての縄張り拡大」という一段次元の高い課題を成員に意識させることで部族全体を統合する(自部族の縄張り第一主義の萌芽)。
こうして、構成員の不安や自我を止揚するための統合様式が、必然的に構成員の不安や自我を集大成した集団課題(集団自我?)として統合される。
それがこの後の時代に人類が「戦争」へと突き進んでしまう、潜在的な要因となったのではないだろうか。
いまだに「外に敵を創る」ことで国内(それぞれが自我・私権性を内包した成員たち)を強引に統合している国家は山ほど存在するが、それが戦争を引き起こす一つの要因となっていることは疑いない。 |
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