採集・漁撈・狩猟から栽培・牧畜・遊牧へ
136002 遊牧部族の父系制への転換は人類史のターニングポイント
 
雪竹恭一 ( 44 大阪 営業 ) 06/10/30 PM09 【印刷用へ
【骨子】
・遊牧は過酷な生活であり、移動のための強い闘争性が必要な生産様式であったため、男の戦力が重視された。
・遊牧部族は、男同士の結束を高め、戦力を維持するために、母系制から父系制へ転換した。
・父系制(女が移籍)に転換すると、女の不安が増大し、女は少しでも有利な生活を求めて、集団の私益を増大させることを期待するようになった。
・遊牧部族の父系制への転換は、私有意識を芽生えさせたという点で、人類史のターニングポイントとなった。

【補足】
@遊牧だと男の戦力が重視されるわけ
・いい牧草地を見つけるためには、何百キロも移動する必要があった。また、草原地帯には、ハイエナやライオンやヒョウなどの猛獣もたくさんいて、それらの外敵から家畜を守る必要もあった。遊牧生活で頼りになるのは、数ヶ月の間搾れるヤギの乳と時々手に入るナツメヤシぐらいであり、過酷な貧しい生活であった。
・その際に、男に期待される戦力は、1)長距離移動に必要な地理の知識(どこに草があるか、どこが危険か等)、2)猛獣から家畜を守る防衛力、3)他部族と接触した時に縄張りを守る防衛力であった。だから、闘争性の高い男の戦力が重視された。

Aなぜ父系制になったのか?
・大きな集団で移動するよりも小集団(15〜20人程度?)に分かれて移動した方が、いい牧草地を見つけるうえで有利であった。だから、遊牧部族は、何グループかに分かれて、一定期間後に夏営地と冬営地で落ち合うことを約束して移動した。
・このような小集団による移動生活は、集団の自立度を高め、男同士の結束を高めることになった。
・一方で、遊牧部族は、小集団(氏族)の連合体であり、部族としてのまとまり(統合)を維持させる必要があったが、その際、貴重な(少数の)男を移籍させてしまうと、男同士の結束と戦力が維持できなくなってしまうため、父系制(女が移籍)を選択した。
・特に、生まれ育った自集団で、子どもの時から地理が頭に入っているという戦力は、家畜の死活問題=集団の死活問題に繋がりかねないほど重要な戦力であった。だから、男を移籍させるわけにはいかなかった。

B父系制になるとどうなる?
・母系集団では女が移籍することはないので、女同士の結束(共認)が強かった。しかし、父系制に転換してしまうと、女が一人で他の集団に移籍することになり、しかも、各々の女の出自はバラバラなので、女同士の結束(共認)は弱くなってしまう。
・女が移籍する場合は、婚資(家畜)を持参することがセットになっていたが、婚資の良し悪し(乳が良く出ればいい等)で、嫁ぎ先の集団からの扱いは変わってくる。(婚資が少ないと良く思われない。)
・だから、母系制よりも父系制の方が、女の不安は増大する。

・婚資は、初めは「嫁ぎ先の集団でも安心して暮らしてゆけるように」との親心だったかも知れないが、女の不安の増大から、しだいに「自分の娘が移籍する際は肩身の狭い思いをさせたくない」「娘が移籍する際の婚資は少しでもいいものを」という形でエスカレートしてゆく。
・そこで、女たちは、男たちにもっと家畜を増やすよう期待してゆく。この闘争期待は、自分の小集団(氏族)内の蓄財意識を生み出し、私有意識を芽生えさせてゆく。
・このような私有意識の芽生えは、氏族間の私益競争を促してゆく。(互いに家畜の多さを競い合うようになる。)しかし、氏族間の私益競争を放置しておくと、氏族間の小競り合いが増え、部族全体のまとまり(統合)がつかなくなってしまう。
・この危機的状況を打開するためには、各部族は、他の部族との縄張り闘争=部族間の私益競争を共通の課題として氏族をまとめるしかなかった。
・やがて、部族間の私益競争が高まってゆくにつれて、部族全体が私益集団としての色彩を強めてゆくことになる。

C人類史のターニングポイント
・人類はそれまで(500万年の歴史の99.9%)は、土地や食料や財産・家畜などはみんなの共有物として生きてきた。
・ところが、遊牧部族の父系制への転換は、私有意識を芽生えさせ、人類の共同性を破壊してゆく出発点となった。
・これを出発点として、その後人類は、私益(私権)を求めて略奪闘争(戦争)を繰り広げるようになってしまう。(続く)
 
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