略奪闘争が勃発し、始まった略奪婚→「私有婚」はどのようなものだったのか。以下に、未開部族の略奪婚の名残の例を紹介します。すべて、『未開人のエロス』(白川竜彦著)からの引用です。
○キクユ族(ケニア中央部一帯)
結納の日から青年は、二人のスイートホームを作り、簡単な家財道具をそろえ、花嫁を迎える準備をすすめる。そして、やがて準備が整うと家族に頼んで花嫁略奪にかかる。
一方、娘のほうは内心では期待しながらも、畠で耕作したり、あるいは森で薪木を集めたり、毎日の仕事に精を出している。そこを襲った青年の家族たちは、そのまま娘をかつぎ上げ、さらっていくのである。
娘は大袈裟に抵抗し、大声で叫び喚き、対に号泣する。その叫び声は部落内は言うまでもなく、遠くジャングル内にいる人々の耳にまで達するが、人々は驚かない。どこかで結婚の儀式が行われているなと、と察するだけで、そのまま仕事を続ける。
また、たまには青年と娘の家族の女性たちの間で、激しいつかみあいのケンカが行われることもあるが、これはあくまで儀式的なもので、無事略奪が終ると、彼女たちは晴ればれとした表情で結婚の祝宴に参列する。
キユク族の略奪結婚も他の風習と同様、略奪とそれをめぐる花婿、花嫁両家の争いというのも、今日では形式的、儀式的なものとなっている。
○ケチュア族(南米)
ケチュア族の若い男女は、互いに気に入ると2人っきりで畠や山の中に出かける。これは、だいたい祭りや大きな催しの行われた後の場合が多いが、2人だけになったとたん、ものすごい取っ組み合いが始まる。蹴る、殴る、引っ掻く、押さえつける、はね返す。所狭しと激しい格闘が続き、ついに疲労しきった2人はじっと動かなくなる。ここから2人の性愛行為はスタートする。すさまじい格闘も2人にとっては、いわば、 前戯にも等しいのである。明らかに略奪婚的な要素も感じられるが、それが果たしてそのような理由によるものかは、今日もなお不明である。が、インカ帝国の建設が決して夢物語でないを如実に示すケチュア族の性行為である。
○コーイ族(インド)
コーイ族は、ゴダグリ地方の北部山地に生活しているが俗外婚ををとっており、娘の伯父が結婚の決定権を持っている。一般には従兄妹同士で結ばれることが多い。その結婚の方法は地方地方によって異なるが、若者は自分の選んだ娘が承知しないと、力づくで掠っていく。略奪婚である。また、彼らに多妻の習俗もある。未亡人などもまだ泪の乾かぬうちに奪われることも少なくない。
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