生物学を切開する
12222 ミトコンドリアDNA解析による進化系統樹の適用範囲は?A
 
蘆原健吾 ( 30代前半 神戸 広報 ) 01/09/29 PM07 【印刷用へ
これらの解析は、分子時計の概念(100万年に2%〜4%で突然変異が起こる)を前提としています。これ自体証明されていないし検証もしようがない仮説です。ちなみに私は、一定期間に一定の確率で突然変異が起こるとは一概に言えないと思っています(例えば、ある状況におかれると変異の確率が上がるということはあり得ると思っています)。

もう一つは、集団の規模の問題です。ミトコンドリアが母系遺伝とすると、娘が生まれなかったらその遺伝子は途絶えることになります。分岐年代の特定などには集団遺伝学における定義や計算式が用いられますが、本来なら、集団の人口がどのように変化したか、どれだけの母系が途絶えたかを把握する必要があります。しかし実際、途絶えた母系は計算式においては無視されているそうです。

また、そもそも、集団規模や集団の生活形態(たとえば男が多く死ぬ生活様式など)によって変異の蓄積速度が異なるでしょう。もどりますが、この点からも突然変異蓄積速度が一定という前提には無理があると思います。

さらに、ミトコンドリアDNAを分析に用いるときミトコンドリアは全て母方の卵細胞からきている(母性遺伝しかしない)、ということが前提となっていまが、次のような報告もあります。

リンク
(ミトコンドリアが完全なる母系遺伝でないという事例証拠)

必ずしも母系遺伝しかしないわけではなく、場合によっては父方のものと混ざる可能性もあるわけです。もし、こういうことが過去の人類集団で頻繁に起こっていたとすると、計算式は成り立たなくなります。


これらを考えあわせると、ミトコンドリアDNA解析による進化系統樹は、絶対的な指標ではありえないということが言えます。もちろん全くあてにならないとは言いませんが、適用範囲に特に注意すべきだと思います(「多地域進化説」を唱える学者は、彼らの実験結果が自説に不利なので、論争の中で全否定したりしていますが、それはそれで極端だと思う)。

個人的には、今のところ、数百万年単位ならある程度適用してもいいのかもしれないですが、数十万年単位で適用するには誤差がありすぎて無理があるのではないかと思っています。
 
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