生命原理・自然の摂理
106703 なぜ生物は二倍体になり、一倍体に戻るのか
 
吉国幹雄 ( 53 鹿児島 講師 ) 06/03/04 PM02 【印刷用へ
>でも2倍体になっても1倍体に戻らないと生命力を再生できないのはなんでなのでしょう??そこが分かったらもっとすっきりするのですが。。。<(10625、長谷川さん)

もし有性生殖で体細胞分裂(有糸分裂)と同じなら(2n+2n=4n)となって倍数体が次々とできて困る。だから二倍体も一倍体(生殖細胞)となって(n+n=2n)で母細胞と同じゲノムを持つことができるから、と一般には「減数分裂のメカニズム」として説明されます。
<細胞分裂と細胞周期>
リンク

しかしこれでは、生命力の再生には一倍体に戻るのが必然であるという進化的な意味としては不十分です。それを考える上でも、「なぜ一倍体に戻るのか」、の前に「なぜ2倍体なのか」、を抑えておく必要があると思います。

多くの菌類、一部の単細胞の藻類、アメーバなどの原生動物は一倍体真核細胞です。
これらの一倍体の真核細胞は「接合」して二倍体になって一体化する能力をもちます。おそらく、一体化したものの方が一倍体よりもうまく外圧変化に適応できたためにそのまま二倍体真核生物へと進化していったと考えられます。

それでは一倍体では適応しにくい外圧とは何か。まずは飢餓状態が考えられます。飢餓状態に入ると活性化エネルギー不足に陥り、体内のシステム維持が困難になり活性化酸素の影響を強く受けたり、ウィルスなどの外敵にさらされたりと危機逃避できなくなる。一セットのゲノムが損傷されて回復できずに死ぬ。ところが、二セットもっていたものはスペアーがあるので生き残る。
つまり、二倍体の最大の適応機能上の利点は優れた「安定性」という点だったでしょう。

やがてこの「安定性」に可能性収束して、この機能をよりよく進化させようとする。
よく使う部分が損傷すると、スペアーを使うのではなく、スペアーを鋳型として複製するようになる。つまり、二倍体機能を優れた修復機能として使うようになる。しかし、同時に困った問題がおこる…この安定な二倍体は裏返せば、新しい環境の激変に適応する変異体を生み出しにくいという欠点を持つことになる。(一倍体は絶えず変異体を生み出し、多くは死ぬが中に強い適応体を生み出す)

そこで二倍体の安定構造を保ちながら一方で変異体を生み出す必要が生じる。減数分裂では「対合」(相同染色体がくっつき、見かけ上一倍体となる)し、そして「交叉」(染色体の一部=遺伝子を互いに交換)が見られます。変異体の登場です。これが粘菌(72789)が危機状態で子実体(2n)をつくり、そして休眠態としての胞子(1n)を形成する過程だと思います。

しかし、この「対合→交叉の遺伝子組み替え」を日常的に行えば、どうなるかわからない変異体を生命体内に組み込むことになるので、それでは生命体の秩序・統合そのものが危うい。そこで特別な生殖系列に一倍体(n)を作り出し、新しい生命体を生み出すシステムを作り上げた。そして、二種の個体の受精によってより多様な生命体を残す有性生殖というシステムを構築していった。

以上が、私が「なぜ一倍体に戻るのか」についた考えた答えです。
つまり、進化則「安定」を実現した「二倍体」と「活性」をより強く実現するための「一倍体」回帰という考えです。
「死」についても、粘菌の例でもわかるように、「二倍体」細胞の分裂回数に制限があるメカニズムの問題ではなく、本質は「死」をもって新しい生命体を確実に生み出すためではないかと思います。


 
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