共認心理学:現代の精神病理
102986 子どもたちの異変
 
岩井裕介 ( 34 山口 再開発プランナー ) 05/12/22 AM03 【印刷用へ
『なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか』藤原智美著、祥伝社
この本には、幼児教育の現場で起こっている、子どもたちの異変についてレポートがある。
(兵庫県芦屋の「レクタス教育研究所」の主宰者に著者が取材した内容)

以下引用、一部抜粋編集 ――――――――――――――

●常識的な言葉を知らない
「語彙が年々減っています。教室で教育的に言葉を教わったり、テレビの影響で、オヤッというようなむずかしい言葉を知っている反面、常識的な言葉を知らない。たとえば、ひとつ、ふたつ、みっつという言葉の意味がわからなかったりする。イチ、ニ、サンといわなければ通じない。みんな語彙が恐ろしいほど貧しくなっています」
子どもたちが言葉で特に苦手とするのは「それ」「ここ」「これ」といった指示代名詞だ。「ここを見て」といっても、反対方向に目をやって戸惑う子が、三人に一人はいる!のだという。とにかくその歳なら理解していて当然という言葉がすっぽり抜け落ちている。
たとえば「たくさん」「はんたい」「まえ」「うしろ」「かこむ」「まんなか」「ほどく」「むすぶ」などなど。これはあきらかに語彙不足という生やさしいものではない。モノと具体的に結びついた言葉しか理解できていないとすると、これは訓練されたチンパンジー以下のレベルである。

●お話作りができない
「お話作り」もできない子が増えた。お話作りとは口頭での作文だ。
たとえば「犬」というテーマで話をさせる。かつては六歳なら「犬と散歩にいって、犬がほかの犬に吠えて、わたしはとても怖かった」くらいの話をつくることができた。けれどいまでは「四本足」と一言で終わる。「それで」というと「しっぽ」と答える。けれどこれならまだましで、もじもじして、一言も発せない子も少なくない。

●言葉が聴きとれない
知識とか学力の問題以前に、子どもたちが言葉をキケナクなっている。先生のいうことが聞けないというのと違って、「生理的に耳に入らない。入っていても聴きわける能力がない。耳の問題なんです」
問題をだしても答えられないのは、どうもその子が耳で言葉の聴きわけすらできていないから、としか思えないケースが多々あるという。
「『その円の中央に三角を描いてください』という問題をテープで流すと、これができないんです」
それで、どこがわからないのか、問いつめていって、どの言葉でつまずいているのか調べる。やがて、「中央」という言葉の意味がわからないのだ、ということがなんとなく見えてくる。それで「中央という言葉の意味がわかりません」と子どもにいわせようとする。けれどチュウオウという言葉がいえない。やがて眠りだす。そこで立たせて、言葉を聴かせる。けれどなんどテープを流してもいえない。ようやく、たどたどしくもいえるようになるのに、三〇分もかかる。

●数の概念が理解できない
「数の概念も怪しくなっている。1はわかるんです。ネックは2。複数になると、とたんにわからなくなる子が四歳になってもいます。こんなことはむかしはなかったんです。それがほんとに増えてきている。悲しいほど多い」


「一〇年前の子どもたちがいまここに五歳として帰ってきたら、みんな天才ですよ。それくらい彼らができていたことがいまの子はできない。これはたいへんなことですよ」
――――――――――――――――――――――――

こうした異変が、一般的にどこまで進行しているのかはわからないが、このレポートが事実だとすれば、子育て・教育にとって極めて深刻な問題である。

知識や学力の問題以前に、人間として普通に「聴くこと」や「言葉の意味を理解すること」、「話すこと」の能力が衰弱してきているのだとすれば、根本的には、おそらく、乳幼児期における「心(=潜在思念)」、つまりは「共認回路(=同化回路)」がまっとうに形成されていないという問題ではないか。
 
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