『拒否できない日本』(関岡英之著、文春新書)の著者が、月刊「文藝春秋」12月号に警告レポートを書いている。
そのタイトルは、
『奪われる日本−「年次改革要望書」米国の日本改造計画』
〜米国に蹂躙される医療と保険制度〜
以下、その抜粋です。
>郵政民営化が成立した今、事情を知る者は次なる主戦場を凝視している。それは公務員削減でも、政府系金融機関の統廃合でもない。それらは真の葛藤から国民の注意をそらす当て馬に過ぎないのだ。この国には米国の手垢にまみれていない、もうひとつの官営保険が存在することを忘れてはならない。それは健康保険である。国民生活に与える衝撃は、簡易保険の比ではない。
>今年、経済財政諮問会議は戦術を変え、医療保険の伸び率に数値目標を導入し、公的医療費を抑制する仕掛けを作ろうと画策している。そうなると公的保険の給付範囲を狭める必要が出てくる。つまり、政府が価格や報酬を抑制している公的医療保険が利く分野が減らされ、外資を含む製薬会社や民間医療サービス業者が自由に価格や報酬を決められる「保険外診療(自由診療)」の分野が拡大されることに繋がる。公的医療保険に代わって保険外診療分野をカバーする民間保険へのニーズも発生する。
>それは、日本の医療制度に市場原理を導入し、公的医療保険を「民」すなわち米国の製薬業界、医療関連業界、そして保険業界に対して市場として開放することにほかならない。米国政府は初年度94年以来一貫して、医薬品と医療機器分野を『年次改革要望書』の重点項目に位置づけているのだ。
>「長生きしたければもっとカネを払え。払えない年寄りは早く死ね」。ホリエモンは「人の心はカネで買える」と言い放ったが、「人のいのちもカネで買える」時代がまさに到来するのだ。
>『年次改革要望書』は今年で12冊目を数える。既に十年以上の長きにわたって、既成事実を積み重ねてきた。たとえ来年、小泉総理が退陣したとしても、『年次改革要望書』とその受け皿である経済財政諮問会議や規制改革・民間開放推進会議が命脈を保つ限り、米国による日本改造は未来永劫進行する。
>それを阻止できるものがあるとすればそれは、草の根から澎湃(ほうはい)と湧き起こり、燎原(りょうげん)の火の如く広がる日本国民の声のみである。
以上、抜粋終わり。
欧米人は医療を「カネ=物」としか見ていない。官僚が考案した日本の安定化装置としての医療制度(健康保険等)もカネが無いので機能不全を起している。もはや、私権に基づく市場原理では全く可能性が無い。これは、日本人の心底から湧き起こる類的価値との闘争なのだ。
医師連中が私権確保のために抵抗し時間を稼いでいる間に、私たちは共認原理に基づく新しい安定化装置としての「類的市場」の実現へ向けての追求を開始しなければ手遅れになる。 関岡氏が期待しているように、ネットは正に「燎原の火の如く広がる」機能を兼ね備えているのだから。 |
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