脳回路と駆動物質
100630 『サイボーグ技術が人類を変える』よりC
 
蘆原健吾 ( 30代 福島 出版系 ) 05/11/10 AM06 【印刷用へ
11月5日放送(再放送11月8日)のNHKスペシャル「サイボーグ技術が人類を変える」を見てのレポートをまだまだ続けます(これが最後です)。

第四章はサイボーグ技術の軍事利用についての内容でした。
リンク

B100628で出てきたジョン・シェーピン教授が再び登場。

彼が研究している“ロボラット”。これがかなりゾッとする内容でした。

ラットの頭に穴をあけ、脳の中の髭の神経を司る部分と快楽中枢に電極を差し込み、無線でリモコンの信号を送る…。そうすると、なんとラットがリモコンの操作通りに右や左に進んでいくのです。ラットが普通なら嫌がるような、梯子にのぼって斜めにあがって行ったりする行動も、躊躇しながらではあれ指示どおりにする。

そのからくりは、右に行かせたいときには脳の右髭の感覚を司る部分に刺激を与え、指示どおり右に行った場合“快楽中枢”を刺激して“報酬”を与える(左も同様)、というもの。これを繰り返すと、ラットは素直にリモコンの指示どおりに動く…というわけです。

生きた動物を、リモコンで操れる…。アメリカはイルカを毒矢を放つよう訓練して軍で利用しているそうですが(カトリーナの被害で逃げ出して問題になっていました リンク)、例えばこれでも訓練の手間が省けて経費も削減できる、というわけですね。コントロールされた鳥や小動物に小型爆弾をしょわせてこっそり放って、自爆テロさせるというのも簡単ですね。動物で済んでいればまだいいですが、犯罪者あたりの脳のてっぺんに電極差し込んで軍で再利用したり、などと考えると…コワ〜

というわけで、アメリカ国防総省は、これの実用化に向けて研究の支援を続けています。既にサルでも実験は成功してるそうな…。これまでそうだったように、アメリカはほんとに何だってやるでしょう(サイボーグではないけれど、既にこんなものまで実用化されているくらいですから リンク これをB100628で紹介したように“ロボット兵器を考えるだけで動かす”なんて、もうちょろいかもしれません)。


さらに番組は、人間の“記憶のサイボーグ化”に踏み込んでいきます。

記憶は脳の中の“海馬”という部位が大きく関わっています。この機能を、海馬の薄い切片に電流を流すことで解析し、その特徴を備えたマイクロチップを作成。さらにそれを何枚かあわせた容量と機能を持った“海馬チップ”が作られていて、10年以内には人間にも実用化される勢いだそうです(参照:リンク)。なんと、これを人間の頭に埋め込む計画があり、記憶の保存容量を上げたり、脳から取り出して交換したりできるようにする…とかなんとか。ほとんど、フィリップ・K・ディックの世界になってきました。「今日は花子ちゃんの人格だったけどもう飽きたから、明日からは太郎君のチップを埋め込もうかな」とか「今日の施主との打合せでメモリーが一杯になったからパソコンに落として、明日はまっさらなチップで会議に臨もう」なんて会話になるのか?

南カリフォルニア大学(神経工学)のセオドア・バーガー教授は、この番組で次のように語ります。

「人工内耳(100620下)を思い出してください。最初は単純な情報でも、脳はどんどん学習していきます。脳の機能を拡げることは、非常に理にかなっていると思う。躊躇する必要はないのです」

そこまで開き直るんですか?!

立花氏:「この技術を、脳の機能の拡大に使えるとしたら、あなたはその先に何を見ているのでしょうか?」

バーガー教授:「脳のことがもっとわかれば、脳の情報処理速度を速める“加速器”だって作れるはず。でも、それは社会が決めることです。この技術を使うべきかどうか、使うならどこまでなのか、ということは社会が決めるのです」

今度は009の「加速装置!」ですか…

これが実用化されたとすると、会話はこんな感じでしょうか。「よし!今日は英検の試験だから脳を3倍にスピードアップだ。5倍にしたいけどニューロンが持たないからな…」

なんとも、5248本田さんの投稿:『原爆をつくった星少年たち』を思い出す台詞です。科学者は研究するのが仕事であって、その成果の使用法については「It's Not My Business」を決め込むというわけです。なんとも無責任というか…

サイボーグ技術は、上記のように脳の機能がわかっているところについてはどんどん実用化しようという動きに、現在はなっています。経済的にも莫大な利益を生みそうなのは明らかなので、誰も止められない、といった感じでしょうか。

アメリカでは大統領の倫理委員会が設けられ、既に議論が始まっているそうです。

番組の最後に立花氏は、サイボーグ技術に関する倫理に積極的な発言をしてきたスタンフォード大学(精神倫理)のハンク・グリーリー教授と対話します。

立花氏:「この技術は、脳の機能を変化させます。脳が変化すれば、人間の人格すら変えてしまうのではないでしょうか」

グリーリー教授:「脳は人間の中心であるため問題なのです。脳を変えすぎた場合、それでも人間は“人間”という種に属するのでしょうか?別の種になってしまうのでしょうか?“人間とは何か”を決めるのはとても難しいことになってきます。それに私たちが“人間を超えたもの”に変わっていくとしたら、それは良いことなのか悪いことなのか、その答えを私は持っていません。この技術が広く人間に使われるようになるまで、あと数年しかありません。今こそ世界中の人たちが、それがもたらす社会的影響の問題について話し合うべきだと思います。話し合いが早すぎるということはありません」

立花氏の締めの言葉を、印象に残った所だけ引用しておきます(日経のHPを見ると他のバージョンも作成されたそうですが、こちらもご参照ください:リンク )。

「サイボーグは、人間と機会が融合する技術だと思うが、それが今、ほんとうに現実になっているということを番組を通じて伝えることができたと思う」

「インターネットで動いている今の世の中、電極を脳に繋ぎ、ネットワークにアクセスすれば身体が全く動かない人でも、世の中との関係を回復することができる」

これまた押井守の『攻殻機動隊』の世界…リンク

「人間のサイボーグ化は、どんどん小型化・精巧化されて進んでいく。広く使われる技術になるだろう。その時この技術が、例えば軍事目的などで使われると、とんでもない“スーパー殺人マシーン”のようなものができることもありうる。人間の破壊本能を爆発させる事に使われるかもしれない」

「5年前にはまるで考えられなかったものが、今、開発の爆発寸前まで来ている。この件については直視し、早急に議論に取り組んでいかなくてはならない」

まさに、医療現場も戦争も、日常生活をも変える可能性がある技術。こんなものがアメリカに独占されたら、とんでもないことになりそうな気がします。この番組を見て、ショックとともに危機感を強く持ちました。

<終わり>
 
  List
  この記事は 5248 ブログ への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_100630
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
160149 雌だけで生殖という単為発生が実験で実現〜このような科学に何の意味があるのか 田野健 07/08/31 PM08
156866 「ダ・ヴィンチ・コード」に見る闇権力のメッセージ〜我々はICチップ埋め込みを絶対に受けてはならない 猛獣王S 07/07/14 PM10
105921 人間の本質的変化は自然を転写しはじめた瞬間からはじまっている(2) 匿名希望 06/02/18 PM01
105920 人間の本質的変化は自然を転写した瞬間から始まっている(1) 匿名希望 06/02/18 PM01
105183 「科学信仰批判」と価値観念 山田真寛 06/02/05 AM00
105029 私権社会の限界 岸良造 06/02/02 PM10
104242 人類は超えてしまうのか 匿名希望 06/01/19 PM02
101373 私権追求のために異常な技術が開発される 野田雄二 05/11/24 PM10
100910 科学者のモチベーション(活力)ってなに? 谷崎俊文 05/11/15 PM11

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp