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    ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能    
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   現存する哺乳類の大部分は(もちろんサル・人類も含めて)、原モグラから枝分かれした。現在の哺乳類の祖先である原モグラは約1億年前に登場するが、その時代は大型爬虫類の天下であり、原モグラは夜行性で、林床や土中に隠れ棲み、そこからチョロチョロ出撃するという、密猟捕食の動物であった(従って、現在でも多くの哺乳類は色盲のままである)。  
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   約六五〇〇万年前、巨大隕石が地球に衝突し、これに誘発されて火山の噴火が始まり、地球は粉塵に包まれて、急激に気温が低下した(この時期を特殊寒冷期と呼ぶ)。氷河期の場合には数万年かけて徐々に気候が変動する為、それに応じて植物も動物も移動してゆくことができるが、特殊寒冷期には短期間に気温が急低下し、北方に生息していた動物たちはあっと言う間に絶滅、南方にいた大型動物も、(たとえ親が生き残っても)卵を孵化することができず、殆どが絶滅した。その中で、水中や温泉の岩陰など比較的温かい所に生息していた動物たち(ワニ・トカゲ・ヘビなど)は辛うじて生き残り、同様に地中に潜ることができた原モグラも特殊寒冷期をくぐり抜け、生き残ることができた。  
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   生き残った動物たちは、この環境変化を契機に一気に適応放散し、多種多様な種が登場することになった。(適応放散とは、生物史上繰り返し現れる現象で、危機的状況に陥ると新たな可能性に収束することによって、一気に多様な適応態が出現することをいう。)大型爬虫類の絶滅という環境変化によって、小型爬虫類や猛禽類や初期肉食獣が多様化し繁殖していったが、この環境は(相手が10m級の大型爬虫類であるが故に、体長10〜20cmのモグラは充分に「隠れ棲む」ことができたが、相手が小型爬虫類や肉食獣になると)原モグラ類にとっては、大型爬虫類の時代以上に危険な生存状態となった。この危機的状況ゆえに、モグラ類は急速かつ多様な適応放散を遂げ、現在に繋がる様々な哺乳類が登場することになる。(それらの中で、樹上逃避することによって適応していった原モグラが原猿である。)  
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   原モグラは、土中に隠れ棲むしかなかった弱者であり、それ故にいくつかの特徴的な本能を発達させている。中でも哺乳類の哺乳類たる最大の特徴は、弱者が種を維持する為の胎内保育機能(それは、危機ゆえに出来る限り早く多くの子を産むという、危機多産の本能を付帯している)である。しかし、卵産動物が一般に大量の卵を産み、その大部分が成体になるまでに外敵に喰われることによって淘汰適応を実現しているのに対して、胎内保育と産後保護の哺乳類には、適者だけ生き残ることによって種としてより秀れた適応を実現してゆく淘汰適応の原理が働き難くなる。そこで、淘汰過程が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化していった。実際、性闘争を強化した種の方が適応力が高くなるので、性闘争の弱い種は次第に駆逐されてゆく。かくして哺乳類は、性闘争を極端に激化させた動物と成っていった。モグラの場合、性闘争に敗け縄張りを獲得できなかった個体(=大半の個体)は、エサを確保できずに死んでゆく。  
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   もちろん、性闘争=縄張り闘争の本能は、脊椎動物の前から殆どの動物に存在しているが、哺乳類は、この性闘争(=縄張り闘争)本能を淘汰適応の必要から極端に強化した動物である。その場合、種を存続させる為には、闘争存在たるオスがより闘争性を強めると共に、メスたちの外側で外敵に対応した方が有利である。従って、とりわけオスの性闘争(=縄張り闘争)本能が著しく強化されることになる。現哺乳類の祖先と考えられているモグラの場合、メスも性闘争(=縄張り闘争)をするが、オスの闘争はより過激で、その行動圏はメスの3倍に及ぶ。従って、概ね3匹のメスの縄張りを包摂する形で1匹のオスの縄張りが形成される。これが、哺乳類に特徴的な首雄集中婚の原型である。  
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   こうして、哺乳類のオス・メス関係を特徴づけるオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理(本能)、および群れの全てのメスが首雄(勝者)に集中する首雄集中婚の婚姻様式(本能)が形成された。このオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理と首雄集中婚は、多くの哺乳類に見られる一般的様式であり、もちろんサル・人類もそれを踏襲している。(学者の中には、首雄集中婚を「ハーレム」と呼び、オスの天国であるかの様に表現している者がいるが、それは全く見当違いである。オスはメスよりも数倍も厳しく淘汰されるというのが事の本質であって、その帰結が首雄集中婚なのである。)  
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   この様に哺乳類は、淘汰適応の必要から性闘争の本能を極端に強化し、その性情動物質によって追従本能(いわゆる集団本能の中枢本能)を封鎖することによって、個間闘争を激化させ淘汰を促進するという淘汰促進態である。しかし、それはその様な大量淘汰態=進化促進態としてしか生き延びることができない弱者故の適応態であり、生命の根源本能たる集団本能を封鎖し、大多数の成体を打ち敗かし餓死させるこの極端に強い性闘争本能は、生き物全般から見て尋常ではない、かなり無理のある本能だとも言える。だからこそ、同じ原モグラから出発して地上に繁殖の道を求めた肉食哺乳類や草食哺乳類は、進化するにつれて親和本能を強化し、その親和物質(オキシトシン)によって性闘争本能を抑止することで追従本能を解除し、(尋常な)集団動物と成っていったのであろう。このことは、大量淘汰の為に集団本能をも封鎖する異常に強い性闘争本能が、もともと地上での尋常な適応には適わしくないor 問題を孕んだ本能であることを示している。しかし、現哺乳類やサル・人類の性情動の強さから見て、やはりこの強すぎる性闘争本能を進化の武器として残し、それが作り出す限界や矛盾を乗り越えて新たな可能性に収束する(例えば親和本能を強化する)ことによって、哺乳類やサル・人類は進化し続けて来たのだと考えるべきであろう。  
     
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